フレディ・マーキュリーとブライアン・メイとロジャー・テイラーとジョン・ディーコンとアダム・ランバートと私 3

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赤を基調にした華麗なるステージ

 

キラッキラのステージから一転して、しっとりとしたテイク・マイ・ブレス・アウェイの冒頭部分が1フレーズ、フレディの声で流れ、それから始まったリブ・フォーエバーは、ブライアンのボーカルがなくて最初から最後までアダムだった。

とにかくすばらしすぎて泣けた。映画のせいで正直聞くのがつらくなってしまう曲なんだけど、アダムの声は死という絶望のその先にある世界(天国?それとも転生への希望?)にまで、伸びていくかのようだった。

彼はどんな曲も違和感なく聞かせてくれるのだけど、特にこういう湿度のある歌い上げ系の曲が合っているような気がする。博士のギターソロも美しくて荘厳だった。

演出の色とりどりのレーザー光線はこれまで見たことないぐらいの量で、京セラドーム2階席から見たときはさらに圧巻だった。これは本当に現実世界の景色なのかしら?と戸惑ったぐらい。まさにIs this a real life? Is it just a fantasy?だった。


そして始まりましたブライアンのギターソロタイム☆彡

フレディに退屈だからお買い物に行きたいといわせ、ロジャーにここまで完全に観客のトイレタイムになっちゃうんなら俺ドラムソロタイムやめるわといわせ、ディーキーにはピーナッツを投げつけられたという伝説のあれが、目の前で繰り広げられているなんて、ある意味感動だ。

でも2020年バージョンのギターソロタイムは視覚的効果がすごくて、博士は隕石に乗って宇宙空間のなか一心にレッドスペシャルを奏でつづけるのだ。

ドボルザークの曲、というより遠き山に日は落ちてのフレーズも奏でていた。

よくわからんけど、とても壮大だ。

ギターと宇宙と。博士の愛するもの全部盛りの欲張りセットですね。

 

ロジャーとアダムはこの間英気を養っていなさい、という最年長者のありがたい心配りかもしれない。でも博士は出ずっぱりなんだよなあ、すごい。ほんとうに。

突っ立って弾いてるわけでもなくステージを動き回るし、コーラスにも参加するし(たまに遅れるのもご愛敬)。ヴィーガンだから動物性たんぱく質とってないのに、よくこんだけ体力あるなと凡人極まりないBBAの自分は思う。

 

続いてハードなタイ・ユア・マザー・ダウン。これもイントロやリフが超かっこいい曲ですわね。

この曲が途中までで終わったかと思ったら、ショウ・マスト・ゴー・オンのイントロが!!うわあああああ!!!

わたしはショウ・マスト・ゴー・オンの歌詞がものすごく好きなんですけど(フレディのことであるとともに、QUEENまたはQALのテーマ曲だと思う。そしてこの世で生きていこうとする人すべてにとってのテーマでもあって)生で聞いたら、本当にもう。

 

フレディの命削って絞りだしたかのような歌は本当にすばらしかったけどアダムも1シンガーとして真摯にこの曲に向かい合い、挑んでいるのが伝わってきて、ブライアンのギターソロもよくって。

この曲に出会えて、生で聞けて本当によかったと思う(もちろんフレディの生歌も聞いてみたかったけれど)震えがきて、目は潤んでしまった。

曲に入りこんじゃってたからちゃんと見えなかったけど、この曲のときは、スクリーンに崩壊した神殿がふたたび構築されていくという映像が流れていたらしい。

あうぅ(溜め息)隅々まで練られているなあ。


ショウ・マスト・ゴー・オンが終わって、そのままRADIO GA GAが始まったとき、私は気持ちの切り替えがすぐにできなかった。

そんな早くできるわけないやろがあああ!って言いたくなるぐらいだった(苦笑)

日本のアーティストだったら少し間をあけるか、いったん暗転入れて、余韻を残しそうなんだけど、本当に畳みかけてくるなあQALは。

でもこの曲だって待っていたんだ。ライブエイドの観客になった気分で両腕をあげて、サビの手拍子に参加する。ああ快感。博士のギターソロも(この曲では意識したことなかったのに)とても良い。

願わくばいつかロジャーがボーカルのバージョンも生で見てみたいです。

ぜひ次回のツアーでは御検討くださいな。

 

コーラス部分から始まったのはボヘミアン・ラプソディ。うおおおお!!!

この曲の伝家の宝刀抜きました感はすごいな、ギターソロの待ってました感も。

しかし博士はなぜこの曲のソロの時に銀色の衣装に着替えて仮面をかぶろうと思ったのだろう( ゚Д゚)

自叙伝によると通称ブライボーグに変身しているつもりで、ちょっとしたサプライズらしいのだけど、なぜこの曲でやるん?と正直思ってしまう。

映画でのマイク・マイヤーズの言葉に反し、車で流して、ガンガン首を振るような曲になったから、さらに盛り上げるつもりでやってるんだろうか。

それとも親や祖父母に連れてこられたお子ちゃまたちを喜ばせるため?


アダムはブラロジャに見初められるきっかけになったテレビ番組でも歌っていたぐらいだから、とても馴染んでいるように聞こえるし、目まぐるしく変わる曲調にも、柔軟に対応していて表情豊か。

でもオペラティック・セクションになって、スクリーンにPVの歌う4人の姿が映し出されたときは・・・なんとも説明しようがない気持ちになった。まわりでも大きな歓声があがっていた。フレディはともかくジョンが写ったのはこの時初めてだったし。

 

4人時代のQUEENを見てなかったくせに、QUEENとはこの4人なんだ、と思い知る。

QUEENとQALは別物、だけどどっちも素晴らしい、と。

 

そう、アダムとフレディを比較するのはアホらしいことなんだ。

フレディのことを永久欠番だって言った人がいたけど、ほんとそれ。

フレディがそうならアダムはドラ1入団の現役スラッガーだ。

レジェンドプレイヤーを仰ぎ見ながら、自分とQALの道を切り拓いていけばいい。

あ、でもこの曲の最後に、ロジャーがドラをたたいてくれなかったのは、ちょっと残念だった。かつて見られたという人がうらやましいです。


本編はこれで終わり、舞台上のQALとサポメンは引き上げていく。

ここまで本当に一気に波に呑まれたかのような感じだった。喉はもうカラカラだ。

 

私はザ・イエローモンキーが好きなのだが、彼らのライブは曲と曲の間、楽器交換のため?の暗転がけっこう多い(最近は少なくなったが)。それで萎えるまではいかないけども、少なからず緊張感や期待感が解かれてしまうのが、ちょっと残念だった。

ところがQALはそれが全くなかった。

博士のレッドスペシャルがすごいのかもしれないけど、ディレクターやら裏方も含めてみんな有能な人たちなんだろなあと感心するし、とにかくノンストップで数々の名曲をたたきこまれる快感はたまらない。

たとえるなら楽しくて仕方ない千本ノックだろうか。

 

アンコールを待つ間、花道にはホログラムのフレディが登場した。

エーオだ、エーオ! またまたライブエイドの観客になったつもりで、私は全力でホログラムのフレディにエーオ!!と答える。

会場にはリアルフレディとエーオのかけあいをやって、フレディったらどんどん難しくするもんだからついていけなかったわー(笑)なんて思い出をもってる人もいっぱいいるんだろうなあ。

そう私の周りの年齢層は非常に高く、ずっと座ったまま見ている人も少なくなかった。

大阪にいたっては若いのも最後まで座ってた。どうしてた、立ち上がって歌いたくならないか?全曲立ちっぱが無理だとしても、沸きあがる血と躍りだす肉を解き放ちたくないのかな?

ホログラムのフレディはFuck youと捨て台詞?を吐いて、私たちに背中を向けて去っていった。それは湿っぽくならなくて、とてもいい締めくくり方だったと思う。

 

入れ替わるように、ステージにはみんなが戻ってきた。

アダムはフレディへのオマージュのように王冠をかぶり、ゴールドのスーツに着がえていた。

聞きなれたバスドラの音が響く。ドンドン、パン。ドンドン、パン。

We will rock youだ! 

この曲はもともと好きじゃなかったけどライブに参加できるというなら話は別だ。

にわか知識の2回手拍子ぱっと開くをしながら全力で歌う。

 

博士はトーキョー2020と書かれた謎Tシャツに赤いサッシュベルト姿になっていた。

あはは。大阪では、カタカナでブライアンと書かれた、ファンからプレゼントされたというTシャツだった。あはは。

(ちなみに、さいたま初日は日本、名古屋の楽日は感謝。泣かさないでよ、もう)

博士は日本だけでなく海外でも、アンコールの時にはけったいな、もといその国独自のモチーフのTシャツを着て出てくるので、おそらくサービス精神の表れなのだろうが、ほんと若い頃とキャラが変わったなあと思うし、フレディがいたら絶対やってなかったんじゃないかって気もする。

もしフレディが見たら目を疑うか茶化しまくるんじゃないだろうか。

でももちろんギターソロはかっこいい(何回目だ、それを言うのは)


続いてWe are the champions !!

なんという大団円感。私はいま、QUEENのライブを見ているのだという満足感で身体が満たされていく。そしてもうすぐライブが終わってしまうだろうことも。

雨が降ろうが風が吹こうがコロナウィルスに恐れおののこうが私たちはチャンピオン。この2曲があればすべてはうまいこと纏まるはずだ! と思ってしまった。


この曲だって大仰やなーって思って好きじゃなかったのに、映画を見て印象ががらりと変わったのだ。

自分たち(QUEEN)がチャンピオンなんじゃない、私達みんながチャンピオンだという歌だったから。

今回生で聞いて、アダムのドラマティックな歌いっぷりとアレンジで、とても好きになってしまった。

スクリーンには金色のでかいカニが映っていた。カニ?ああブライアンの星座が蟹座でカニQUEENのクエストにもありますね。もちろん獅子や乙女も写っていた。


終わってほしくないものほど、終わるのが早い。

曲が終わって、God save the Queenが流れてくると、カーテンコールのように、ステージ前方に出演者全員が集まって、深々とお辞儀をした。

さらにQALの3人が前に出る。

アダムはブラロジャに盛大な拍手をといわんばかりに、笑顔で手のひらを向けていた。

 

ありがとう。この言葉を伝えるのがあのときは一番ふさわしかった。

元気に日本に来てくれてありがとう、

私の前ですばらしい演奏をしてくれてありがとう。

そうとしか言いようがなかった。


彼らが去っていったあと、世界の捧ぐのジャケットに描かれている巨人がスクリーンの中で緞帳をめくり手を振っていた。

客電がついて、場内にはデビッド・ボウイHerosが流れた。なんでこの曲をセレクトしたのかわからないけど良い曲だった。

明るくなったとたんに裏方さんが大勢出てきて、豪華なセットは情け容赦なく、どっかんどっかん解体されていった。

すぐに移動させなきゃならないからだろうけど、いきなりすぎてちょっと寂しい。

 

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すぐに明るくなってしまった

すごいものを見てしまったというのが、ライブが終わって最初に浮かんだ感想だった。
オカルティックな意味ではなく、何十年も前にこの世を去っていったフレディはステージにいたし、ジョンだってツアーに同行している。

確かにそう感じられたステージだった。


過去は消えないけど、未来だってなくならない。

QUEENの曲は現在進行形であってアーカイブにしまいこむ懐メロではない。

ブライアンとロジャーはきっとそう理解している。

このレガシーを永久保存し増補改訂できるのがQALというプロジェクトだと。


そうQALの3人は想像以上に良いコンビネーションだった。

それは年齢やキャリアの差を超えた互いへの絶対の信頼と尊敬ゆえに成り立ったものに違いない。

また3人のサポメンの仕事ぶりも、The縁の下の力持ちといった感じで感動的だった(というかとにかくうまいし)。とても5人編成とは思えないくらいQUEENらしいゴージャスな音に仕上げていた。

 

セットや照明はものすごく豪華ではあるけれど(赤い緞帳だの2階建てのオペラ劇場の客席だのすべてがプロジェクションマッピングだったらしい)映像はあくまでもおまけで(ちゃんと見られなかったのがもったいないくらいの出来だが)極力頼らず、基本的には歌い奏でるだけのシンプルな構成だ。

そういえばQUEEN時代も、舞台装置や照明は派手だけど、管楽器や弦楽器やダンサーやコーラス隊は出さず、自分たちの音楽と身体性で勝負するというある意味ストイックなステージングだったと思われる。


そしてフレディが神々しいまでにオーディエンスを圧倒し支配していくタイプだとしたら、アダムはみんなでQUEENの楽曲を楽しもう!僕も楽しいよ♪という巻き込み型なんじゃないかと思った。

絶対君主に跪き、恐れ戦きながら背筋をのばしてキリキリ行進するのも快感なら、

知らない者同士がわらわらと寄り集まって手をつないで練り歩く祭りの夜も楽しい。

QUEENという国家においては、どっちだって正しいのだ、

音楽と中心に立つ人がとてつもなく優れているんだから。

 

大阪で一緒に見た友人は言っていた。

「フレディがいない寂しさをみんなで分かち合うようなライブになるんじゃないかと覚悟していったんだけど、不在感や欠落感はなく、ただとても楽しい時間を過ごすことができた。QUEENとは違うものだけど、とてもよかった」と。


もしかしたらQALが始動した当時はそんな感じだったのかもしれない、ウェンブリーでのフレディ・マーキュリー・トリビュートライブのように。

でも8年以上もアダムと一緒にやって、QUEENにQALという新たな章(スピンオフだろうか?)が綴られていき、フレディの幻影を追う時代にはピリオドまたはカンマが打たれたのかもしれない。


これはひとえに、ブライアンとロジャーとアダム(&サポートメンバーズも)の努力と、QUEENの音楽を滅ぼすまい過去のものにするまいという執念にも似た使命感によるものだと思う。

でもみんな楽しそうなんだ。

多分それも、すぐれた音楽のもつマジック的なところなのだろう。たとえ肩に力が入っていたとしても、音楽が自然にほぐしてくれるのだ。

演者の心もオーディエンスの心も。

 

人間だれしも年をとる。年をとったら見た目は悪くなるし記憶力や判断力だって衰えてくる。それはみんな避けることができないものだと思うし、いきすぎたアンチエイジングは若いが一番原理主義にとらわれた人みたいで私は好きではない。

逃げ恥の登場人物のゆりちゃんがいうところの、年齢という呪いに囚われた人にはなりたくはないと思う(といっても白髪染めぐらいはしてるのだが自分も)


だから年を取るのも悪くないよって言って体現している人は大好きだ。

フレディが「年を取ったQUEENも悪くないだろ」って言っていたけど、その通りだよと伝えたい。
ロジャーはどこの美少女かと見まごうばかりの美形やんちゃ系アイドルから、中年期のカッコいいドラマー期を経て、今は彫り物だらけの恰幅のいいパワフルおじいさんだ。ブロンドの髪も若干薄くなっている。

ブライアンはザンドラ・ローズ御大のミューズですか?とばかりにひらひら衣装が超似合う吹けば飛ぶよな線の細さで、蚊の泣くような声で歌っていたというのに、今はけったいなTシャツに身を包んでイラッシャイマセエエエエエと叫ぶわニコニコしながらギター弾きまくるわ腹が出て(でもなぜか足は細い)髪は真っ白になり、コーラスマイクに戻るのに間に合わなかったり、特効のスモークが出る場所に立ったままでいて、危ないでとアダムから引っ張り出されたりしている。


でも2人はかっこよかった、圧倒的に。

映像で見ていた昔の彼らも肉眼で見た老いた彼らもかわりなく素敵だった。

ライブ前、私はブライアンとロジャーのことを冗談半分で、おじいちゃんたちと言っていたけど、ライブを見てしまったら、もうそんなふうに言えないと思った。

私たちが応援するなんてとんでもない、むしろ、彼らからエネルギーをもらってばかりだったんだから。


オリジナルメンバーのQUEENを体験することはできなかったけど、QALには間に合ってよかったと心から思った。きっとアリーナの最前列なんかで見てたら死んでた(社会的に)または廃人化してさいたま新都心にて即身仏になってたに違いない。

 

そして今の思いといえば、まだまだQALのライブが見たいの一言に尽きる。

これはロスなんですかね、よく言う何とかロスだってアホちゃうかっ?と思ってたし、実感したこともなかったんだけど。いや飢餓状態なんでしょうか。

彼らが日本を去ってからもずっとずっとライブ配信を聞いているんですが・・・(時差があまりなくてちょうどよかったのですオセアニアは)耳から入る刺激っていいですね、映像以上に記憶を補完し感情を揺り動かしてくれる気がする。


そういえば生まれて初めての撮影(動画でも)OKライブだったのだが、残念ながら、自分のスマホではどんなに頑張っても大した絵が撮れないことがわかってたので、最初から投げていた。

はじめてのQALなんだから我がの網膜に焼き付けたいですしね。

とはいえ記念に数枚撮ってはみたんだけど、コレ記録にもならんやんか・・・程度のものだった、やっぱり。いちおうズーム機能のあるコンパクトデジカメでも撮ってみたが、だめだった。

いっそTwitterでちょいバズってたQAL写真へたくそ選手権に応募すりゃよかったわ。

 

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フレディと博士、これでも(笑)

 

できることなら、QUEEN物語「QAL編」をまだまだ続けて、新たなフェイズまで行きついてほしい。さらにグレードアップしたツアーをやるとかQALの完全オリジナル曲を制作するとかでもいい。

私はそれを見届けたいし、フレディもジョンも私たちといっしょにツアーに参加し続けるはずだ。

ジョンはふんわり笑顔で、フレディはアダムのことを、ちょっぴりジェラシーを感じながらも頼もしく見つめるだろう。

楽し気にプレイするブライアンとロジャーには、笑顔でFuck youと指さしながら。


ショウは続く。QALを追う私の旅もまだ終わらない(といいな)。